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help リーダーに追加 RSS 紡がれる蒼い唄 Misson 10-4 鮮血の記憶

<<   作成日時 : 2007/11/11 20:39   >>

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 トモノは、鞄の中を確認した。


 ナジは宿を出るとき、ベドーに向かうと言っていた。エルメスが待っているのだと。
 何かがおかしい。それは、直感としか言いようが無かった。
 今までエルメスは、どこにいたのだ。ウルとロウレイが倒れた。その直後、ナジのもとに現れる。できすぎてはいないか。まるで、この状況をどこかから見ていたような気がする。
 追わねばならない。もし、ナジの身にエルメスの剣が降り注ぐのならば、それこそ身を挺してでも守らなければならない。
 鎧を、一度確認した。長い旅になるとは思えない。しかし、何があるかもわからない。エルメスが、何を考えているのか。何のためにナジを呼び出したのか。
 トモノは、先回りをするためにベドーへの間道を進んだ。おそらく、ナジは本道を走っているだろう。そもそも間道は、軍事目的で作られたもので、主に斥候隊が使用していた道である。道幅は狭く、通常の地図には記載されていない。大戦時には使用されていたが、今は誰も通っていないはずである。ナジが知りえるはずはないのだ。
 日が暮れ、闇の帳が幕を下ろした。雲が厚く、月が隠れてしまうとまったく道が見えないほどの闇である。それでもトモノはチョコボを進めた。さすがに、駆けさせるには危険が大きかった。しかし、並足程度なら進める。
 しばらく歩くと、木々の合間を縫って明かりが見えた。それは次第に大きくなり、やがて足元をほのかに照らすほどの明るさになった。
 ―――あれは……?―――
 明かりに目を凝らすと、大規模な商隊が野営をしていることに気がついた。大戦時は何もなかった場所だが、商隊が独自に作った道と、偶然交差したらしい。商隊が道を作るのには、大きな意味があった。独自の輸送路を確保することで、他よりも早い物流を可能にする。目立たぬ移動で、盗賊から身を守る。できるべくしてできた道なのである。
 たくましいものだ。トモノは、心にほのかな暖かさを覚えた。人は、生きている。生き抜くために、努力を惜しまず、新たな知恵を生み出す。
 不意に、眩いほどの光に包まれた。思わず、顔を背ける。熱風が、肌を刺した。悲鳴。断末魔。
 再び視線を戻す。そこに、トモノは信じられないものを見た。
 商隊が、襲われている。襲っているのは、獣や獣人ではなく、人間だ。しかも、その身なりを見ると、明らかに正規の軍隊だった。賊徒などの粗末な装備ではない。
 チョコボを駆った。鞘を払い、切っ先を下げ光の中に飛び込んだ。驚いた顔をした兵士が、トモノに顔を向ける。下げた切っ先を上げる。血しぶきが上がった。兵士が、驚いた表情のまま、後ろに倒れる。
 上げた切っ先を、そのまま天に向けた。炎が舞い上がり、空を紅く染めている。
 「剣を置け。刃向かうものは、容赦しない」
 言って、辺りを見回した。黒い鎧に身を包んだ数十人の兵士が、一斉にトモノに剣を向けた。
 背中に、悪寒が走った。どこかがおかしい。視界に、違和感があった。トモノは、その違和感の正体に、すぐに気がついた。兵士の装備は、確かに正規軍のものだ。しかし、持っている剣だけが、位の低い獣人が使う粗末なものだ。
 「何の目的で商隊を襲う」
 金品が目的ではない。それならば、獣人の剣など使う必要はないのだ。ならば、何が目的なのだ。
 不意に、兵士達が囲みを解いた。囲みの後ろから、一人の人物が現れる。その顔には、見覚えがあった。
 「誰かと思えば」
 その人物は、はき捨てるようにそう言うと、トモノを睨みつけた。
 「ジーク将軍、だな?」
 額の左側から、目の上を通って、頬まで大きな切り傷があった。左目は開いていない。おそらく、切り傷のために、潰れているのだろう。右手は、肘から先がない。かつて出会ったジークは、これほどの傷を負っていなかったが。しかし、確かにジークだ。
 「トモノ将軍、いや、今は将軍というべきではないのか。こんなところで何をしている」
 ジークの声は、明らかに侮蔑が混じっていた。何か、嫌なものでも見るような目で見られている。
 「それは、私が聞きたい。これは、どういうことなのだ。事と次第によっては、許すわけにはいかん」
 ジークはその言葉を聞くと、低い声で笑い出した。
 「許すわけにはいかんか。さすがに言うことが違う」
 ジークは、ほのかに気を放っていた。殺気とは違う、もっと禍々しいものだ。
 「まったく、トモノ殿に会うと、決まって物事が悪い方に向かう。なぜだ。なぜ私の邪魔をする?私に何の恨みがあると言うのだ」
 ジークは、突然横にいた兵士を殴りつけた。倒れた兵士を蹴りつける。兵士はうずくまり、低いうめき声を上げた。
 狂気。ジークが放っている気は、明らかにそれだった。まるで、何かに憑かれたかのような目をしている。


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