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help リーダーに追加 RSS 紡がれる蒼い唄 Misson10-3 黒衣の騎士

<<   作成日時 : 2007/10/21 17:59   >>

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 困ったことになったものだ。ナジは、そう思った。任務を与えられ、会議室から追い出された。まったく勝手なものだ。第一、国の一大事を一介の冒険者に任せるなど、どうかしているとしか思えない。本来ならば、正式な調査団を派遣するべきである。それを、国の面子や大臣がどうのという、意味のわからない理由で冒険者に押し付けるとは、この国の先も暗い。


 明日になったら、任務を断ろう。ルシウス補佐官ならわかってくれるだろう。冒険者は、ナジだけではない。有能な冒険者など、沢山いるはずだ。
 ナジは、トモノとウルの待つ宿に足を向けた。
 夕暮れの街。空は赤く染まり、路地にはすでに闇が幕を下ろしている。
 「闇の王が、復活する」 
 不意に、声が聞こえた。懐かしくもあり、どこか不気味な気配もある。
 「また、世界は闇に包まれることになるのか。君は、それを止めるつもりはないのか」
 声の主は、漆黒のマントを翻した。柔らかな風をはらんだマントが、大きくなびいた。
 「大将さん?」
 「久しいな、ナジ。元気にしていたか」
 ナジは、その声に力なく首を振り、うつむいた。無二の親友を、一緒に冒険をしてきた仲間を失ったのだ。元気であるはずがない。今のナジは、全てにおいて自暴自棄になっていた。世界が滅びようとかまわない。
 「旅に出よう、ナジ。全てを元に戻すために」
 ナジは、弾かれたように顔を上げた。
 「原因は、私にあるのだ。詳しいことは、旅をしながら話そう。任務を受けなさい。世界を守るため、などとは言わない。取り戻しに行こう、二人の仲間を。ベドーの入り口で、私は待っている」
 走っていた。気がつくと宿の扉を叩くように開け、部屋に駆け込んでいた。その様子を見たトモノが、驚いた顔をナジに向ける。
 「どうしたんだ、ナジ?そんなに慌てて」
 「ベドーに行きます。大将さんが待ってるの。すぐに行かなくちゃ」
 いつも使っている革の鞄に、荷物を詰め込んだ。足りないものを確認している余裕は無かった。すぐに宿を出ようと駆け出す。それを、トモノが捕まえるように押しとどめた。
 「待て。誰が待っているって?」
 「離して、トモノさん。すぐに行かなくちゃ!」
 「大将とは、エルメスのことだな。止めておけ、ナジ。あいつは、どこか信用がならん。何か考えてるのかもしれん」
 「離して!」
 ナジは、手を払いトモノを睨みつけた。
 「大将さんは、そんな人じゃない。それに、もしそうだとしても、私は行かなくちゃ。例え殺されるとわかっていても。ほんの一握りでも希望があるなら、私は行く」
 束の間、睨みあった。ナジは、今まで感じたことの無いような熱を、体の奥に感じた。力が、溢れてくる。気力がみなぎってくる。
 視線をはずし、部屋を出た。商業区にいるガードから任務を受け取ると、任命書をもぎ取るようにして、鞄に詰め込んだ。
 ―――ウル、待ってて。必ず、必ず助けるから―――


 ベドーには、雨が降っていた。もう、寒い季節になっている。北の国は、もっと寒いだろう、とエルメスは思った。
 二つの命が、燃え尽きた。そしてもう一つの命が、今、燃え尽きようとしている。
 どこまで行けば終わるのか。何人殺めれば、どれだけ罪を重ねれば終わるのか。エルメスは、そう思いながら、冷たい雨に打たれていた。


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